FIA 世界耐久選手権
FIA 世界耐久選手権 (FIA World Endurance Championship,) とはフランス西部自動車クラブ (ACO) が組織し、国際自動車連盟 (FIA) が運営する耐久レースの世界選手権である。略称はWEC(読みは「ダブリュイーシー」もしくは「ウェック」)。
1981年から1985年までの同名の大会についてはスポーツカー世界選手権を参照。
2010年よりACOが開催していたインターコンチネンタル・ル・マン・カップ(ILMC)を発展させたものであり、1992年まで開催されていたスポーツカー世界選手権の事実上の後継大会にあたる。ヨーロッパ、アメリカ、アジア各地域で2から3レースずつが行われる。2017年までは春から秋、2020年以降は夏から翌年のル・マン24時間レースまでを1シーズンとする。転換期にあたる2018~2019年は「スーパーシーズン」と呼ばれ、18年春に開幕し翌19年のル・マンを最終戦に置く変則的なカレンダーが導入された。
トップカテゴリの「ル・マン」プロトタイプ1 (LMP1) では、2010年頃からハイブリッド動力の開発が盛んに行われ、ノンハイブリッドのLMP1と、ハイブリッドのLMP1-Hといった表記もみられるようになった。LMP1-Hは、エネルギー回生システムの出力でフォーミュラ1カーを上回るなどして注目を集め、2015年には通年で三社、ル・マンは四社が参戦するほど隆盛を極めた。しかしコストの高騰とフォルクスワーゲングループのディーゼル車不正問題からのEVシフトが重なり急速に衰退。2017年にポルシェが撤退を発表しワークスがトヨタ一社のみとなった上、ノンハイブリッド勢との戦闘力の差が大きいことなども問題視され、2010年代末にはカテゴリの将来が危惧される状況になった。
2018年頃より、刷新を図るため、LMP1-Hに代えて新たにル・マン・ハイパーカー (LMH) というカテゴリを設定する方針、といったことが断片的に伝えられてはいたものの、具体的な進行はあまり無く、2020年には折からのCOVID-19の流行もあり、LMHの導入は2021年からとなった。またこの間に、IMSAの新カテゴリ「ル・マン・デイトナ・h」(LMDh)との相互化なども検討されているが、LMDhの実施について「完全導入は2023年の見込み」と報じられるなど、2020年9月の時点では、後継カテゴリの全貌はまだはっきりしていない。ハイパーカーには、トヨタとスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウス(SCG)に加え、プライベーターとしてLMP1に参戦したバイコレス、プジョーが参戦を表明している他、モータースポーツメディアによれば共通のハイブリッドユニットやシャシー提供メーカー等についても報じられている。
プライベーター中心のLMP2は安価なシャシー・市販車用エンジンを採用する規定で多数のコンストラクターが参入したが、コストが高騰したため2017年からシャシーは4社、エンジンはギブソン一社のみにに絞られることとなった。しかし依然としてプライベーターからの人気は根強い。
LMGTEプロクラスは当初マニュファクチャラーの増減はなかったが、後にフォード(2019年をもってワークス活動を終了)・BMW(2019年をもって撤退)が参戦を表明して5社に増えることで、2017年に世界選手権へと格上げされた。
詳細は「ル・マン」プロトタイプを参照。
Le Mans Prototype(LMP)は、レース専用に設計されたスポーツカーである。
自動車メーカー系ワークスや有力プライベーターが参加する独自設計が許されたLMP1と、プライベーターを対象とした市販シャーシと市販エンジンの組み合わせに限定されるLMP2、さらにWECには存在しないが、地域選手権の入門カテゴリーとして2015年に新設されたLMP3に分けられる。更に、LMP1クラスは、ハイブリッドカーを対象とするLMP1-Hybridと、ハイブリッドカー以外を対象とするLMP1 non Hybridに車両規定を分けていて、LMP1車両ではディーゼルエンジンやエネルギー回生システムの使用を認めている。ヘッドライトは白。様々なエンジンレイアウトによる戦力の不均衡が出ないように、BoP(Balance of Performance、性能調整)やEoT(Equivalence of Technology、技術の均一化)といった施策をとって性能調整を図っている。なおワークス格での参戦チームはLMP1-Hybridでの出場が義務付けとなっており、LMP1 non Hybridはプライベーターによる場とされている。
LMP全体の共通ルールで、クローズドボディ車は室温が一定以下になっている必要がある。また元々はLMP2ではオープントップが許可されていたが、安全上の理由で2017年を持って完全に廃止された。
ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車の性能調整の為の値。
ル・マン24時間レースが開催されるサルト・サーキットのみ300kWの制限が付く。他サーキットについては無制限。
2017年より、LMP2カーのエンジンは、ギブソン(旧称:「ザイテック・エンジニアリング」)のワンメイクとなる。LMP2マニュファクチャラーも同年より4社に限定され、フランスのオンローク・オートモーティブとオレカ、イタリアのダラーラといったヨーロッパ系の3社に、アメリカのライリー・テクノロジーズとカナダのマルチマティック社による北米系の合弁プロジェクトを加えた4大マニュファクチャラー体制となる。
シャシーのマニュファクチャラーは当初「最大5社に限定」とされており、2016年時点ではリジェ(フランス)、ライリー・テクノロジーズ(アメリカ)、童夢(日本)、ジネッタ(イギリス)、アデス(ドイツ)が認定を受けていた。ただ実際には童夢など、認定を受けながら実際のシャシー製造を行わない会社もいたため、追加でノルマ(フランス)が認定を受けている。
市販スポーツカーベースの競技車両。2010年までのLMGT1、LMGT2を2011年より1本化した。車両規格はLMGT2と同一だが、プロドライバーを対象としたLMGTE Proと、アマチュアドライバーを中心とするLMGTE Amの2クラスに分けられる。LMGTE Amのチームは1年以上の年式落ち車両を使用する。ヘッドライトは白(2018年より、2017年までは黄色)。バランスオブパフォーマンスにより車両重量、燃料タンク容量、リストリクター径、ウィングの設置高さ、ガーニーフラップの有無などを変化させることで、車両間の均衡を保つようになっている。BoPについては一人のテストドライバーが全車種をドライブすることにより決定している。
また、SRT・バイパー・GTS-R(エンジン8,000cc)のように基本レギュレーションから外れていても、特別調整を受ける事で参戦が認められることもある。
開催されるレースは最低6時間以上の耐久レースとする。ただし2012年開催のセブリンク12時間レース、2019年より開催のセプリング1000マイルレースを除き、ル・マン24時間レース以外のイベントは2012年〜2019年を通じすべて6時間で行われている。
出場するドライバーはレース経験や実績に基づき「プラチナ」「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」という4段階のステータスに分類される。また、各カテゴリーにはドライバーのステータスに応じて以下の参戦条件が設定される。
WECでは以下のチャンピオンシップが設定される。
マニュファクチャラーズポイントは、各マニュファクチャラーの最上位のマシンに付与される。2012年のみ全8戦中6戦の有効ポイント制を採用した(ル・マン24時間レースを必ず含む)。各レース1位から10位のマシンにポイントが与えられ、11位以下の完走したマシンには半分のポイントが与えられる。ただし、ル・マン24時間レースは獲得ポイントが2倍(2018年,2019年は1.5倍)、2019年より追加されたセブリング1000マイルレースは獲得ポイントが1.2倍(2020年より1.5倍)になる。また2019-2020シーズンより追加されたバーレーン8時間レースも、セブリング同様の獲得ポイント(1.5倍)となる。
本節には、直近のシーズンのみ掲載する。
新生・世界耐久選手権(WEC)の1戦として、開催初年度の2012年から日本の富士で6時間レースが開催された。富士での世界選手権は2008年のF1日本GP以来4年ぶり、耐久レースの世界選手権としては1988年のWEC-JAPAN以来24年ぶりの開催となった。日本においてもSWC時代の1992年鈴鹿1000km以来20年ぶりの開催となった。
開催初年度は、F1日本GPの1週間後と言う日程、トップカテゴリーのLMP1に参加するワークスがアウディとトヨタのみ、WEC-JAPAN時代のようにメディアグループのバックアップが無いなど不安要素もあったが、両陣営の主力ドライバーが中嶋一貴、アンドレ・ロッテラー、ブノワ・トレルイエなど日本でもおなじみの顔ぶれだったこともあり主催者発表で32,000人の観衆とまずまずの成功を収めた。
予選でポールポジションをトヨタ・TS030 HYBRIDの中嶋一貴が獲得。日本人の世界選手権でのポールポジション獲得は、1987年WEC-JAPANの和田孝夫、1988年同じくWEC-JAPANの岡田秀樹に次いで3人目となった。
決勝では、2位アウディ・R18 e-tron クアトロに11秒の差を付けて優勝した。耐久レースの世界選手権で日本人が優勝するのは、1992年モンツァの小河等以来の事である。
2013年はトヨタも2台体制で挑み、アウディとの対決が大いに期待されたが、決勝日は朝から悪天候でセーフティーカーランでスタート、結局3度の赤旗提示でレースらしいレースが行われないまま16周で成立、優勝は中嶋組のトヨタとなった。中嶋は大会2連覇となった。トヨタはシーズン初勝利となった。
2014年
第5戦として開催された富士6時間レースでは、ポールポジションのトヨタ8号車が1周目こそポルシェ・アウディ勢とトップを奪い合う激しいレースを展開したものの最終コーナーまでにトップを奪い返すと、その後は安定したレースを展開した。レース中ほぼトップを独走し、ポールツーウインを果たした。2位は中嶋一貴がドライブするトヨタ7号車で、優勝した8号車以外では唯一の同一周回車となった。トヨタ・TS040 HYBRIDは3位以下の全車を周回遅れにし、1-2フィニッシュを飾った。ポルシェ20号車が3位表彰台を獲得した。3位・4位にポルシェ、5位・6位にアウディが入っている。
2015年は、予選でポルシェ・919ハイブリッドの18号車が1分22秒763という驚異的なタイムでポールポジションを獲得した。決勝レースは雨中でのレースになった。セーフティカーの先導によりレースが開始され、セーフティカーに従う状態は40分間続いた。1位はポルシェ18号車に順位を譲られたポルシェ17号車が入り、2位は18号車、3位と4位にはアウディ勢、続く5位と6位にトヨタ勢の2台が入っている。